UA×菊地成孔『cure jazz reunion』レビュー

 2006年に発売された、菊地成孔UAのコラボ作品である『cure jazz』の再結成ライブを記録したライブ盤で、渋谷Bunkamuraオーチャードホールでの公演と、その前哨戦として行われた沖縄・桜坂劇場で行われた公演の2公演から選ばれた10曲が収録されている。この10曲がそれぞれどちらの公演で演奏されたものかは記載されていない。


 ライナーノーツや各種インタビューで菊地は再結成の経緯について、菊地から提案したものでも、UAから提案したものでもなく、イベンターから菊地に提案があり、それならばUAのOKが出ればやってもいいということから始まったと答えている。おそらく今『cure jazz』的なるものが必要もしくは有効だから再度やった方がいいと本人たちが考えていたわけではないというのがこのライブ盤では大事な要素であるように思う。なぜならば、このアルバムは2006年からいろいろあった8年間で成長したアーティストのドキュメンタリーとして機能しているからだ。


 一聴して気がつくのは、2006年のスタジオ盤よりも遙かに艶があるということだ。菊地のサックスもだが、特にUAのボーカルの印象が自分が持っていたそれまでとは大きく異なっている。今までの神秘的なイメージ(ビジュアル等の印象が影響しているかもしれないが)から、包み込むようでありながら生々しく、そして何よりも軽やかになっている。これらはライブ盤であることが影響として大きいだろう。しかし、ライブでこういったパフォーマンスをすることが前提になっていれば、スタジオでもこれに近い方向性の作品を作ったのではないだろうか。つまり、組み合わせとしては『cure jazz』であっても、当時考えていた『cure jazz』では表現できていなかった部分が出てきているように思う。そしてこれはいいことでも悪いことでもなんでもなく、人が8年分歳を取ったことの結果であり、それこそが堪らなく美しく思えるのだ。